ブラッティ・エンジェル
「まだ友達を作っていなかったんですか!?」
「別に、いなくても困らないですわ。それより…」
「そんなことではダメです!私が大天使になったら一人ですよ。大天使は書斎をあまり離れられませんし、天使は必要がないときは立ち入れませんし。」
「天使の仕事なんて、一人で出来ますわ。それに、見習いがつきますから一人になりませんわ。それで…」
「確かにそうですね。あぁ、安心しました」
「ヒナガ、話をそらしてません?」
「え?なんの話をしてましたっけ?」
そうだった。周りからは、しっかり者という評判だけど、実は物忘れが激しい天然だった。
 こんな子が、大天使になって大丈夫なのだろうか?
 大天使になったら、一人で仕事をこなさなきゃいけないのに。ウスイという名の、助手がいないのに。
 いや、そうじゃないって。
「あなたが、恋したって話ですわ」
「そうでした!別にそらしていたわけでは…」
「はやく本題にはいりましょ」
これ以上話がそれる前に。
 もう一度キョロキョロとあたりを見渡したヒナガは、真剣そうな顔に戻った。
「私が恋したのはですね。実は…」
空気が緊張で張り詰める。
 ヒナガの唇を見つめる。
「人間なんです」
今、なんて言った?
 言葉が、喉から出てこなかった。声すら、出てこない。
 理解できない。天使同士の恋ですら、恋という意味すらわからないわたくしが、どうやって人間と天使の恋を理解できたろう。
 全くといって、理解できない。
 別にタブーではない。しかし、普通に異端扱いされる。
 それに、天使と人間の恋が原因で、タブーを犯す天使が多い。
 それはとても、危険だ。
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