Death File
わたしは片方の4リットルのポリタンクを足で蹴ると、床にガソリンが流れ出す。

車両内に明らかな異臭が漂い出し、乗客たちが顔をしかめ出した。

わたしは無言でもういっぽうの4リットルのポリタンクを持ち上げるとガソリンを頭からかぶった。

「おい! なにをする! やめろ!」

近くにいたサラリーマンが悪態をつくが、そんなことはどうでもいいことだ。

わたしはライターで火をつける。

一気に周囲が炎に包まれ乗客が悲鳴を上げ始める。

わたしと一緒にガソリンをかぶってしまったサラリーマンや、右隣の大学生らしい女が炎に焼かれている。

逃げようとするが、満員電車内の混雑のためにみんな炎に包まれていた。

唐突に、わたしの肩の重さがなくなった。

と、同時に灼熱の業火が車両内に拡がっていった。

わたしの目玉が焼けたのか目の前が真っ赤になった。

周囲からは依然として悲鳴が聞こえてくるが、それも耳が焼けたのか聞こえなくなった。

わたしは口から火を吐いていた。

どうやら先に飲みこんだガソリンに引火したらしい。

不思議なことに熱いという感覚はなかった。

炎に焼かれているというのに、わたしの胸の中はなにかすがすがしい思いがした。

あの『Death File』に映っていた黒こげの死体がわたしの脳裏をかすめた。

そこでわたしの記憶は終わった。



ガソリンだ、ガソリンだ、ガソリンだ。

あたり一面火にまみれ

逃げる人間火にまみれ

しかし逃げる事ができない。

ガソリンだ、ガソリンだ、ガソリンだ。

ざまあみろだ!
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