G i f t ~ギフト~
『ごめんなぁ春人。連休は旅館だから我慢してな?』


「しゃーないなぁ・・・俺も実家にでも帰ってるわ」


彼に連休は会えない事を伝え私は渋々旅館に旅立つのでした・・・。


連休初日


旅館へ着くと今日の客人数確認し、自分の寝床を確保する。


「残念や~。2日間満室。客室では寝れんなぁ。かぁちゃんが使ってた部屋使えな」


予想してた猛の答え。


渋々、プライベートの部屋を借りる事に。


ここの住人は私の事をただのバイトとは思ってない。


女将、若女将の代わり。そして家族と思ってる。


私もここの住人を第2の家族だと思ってる。


なんせ・・・10年も付き合いがありますから。


私の他にも3~4人バイトが居て、私はそのバイトの指示係り。


そしていつものように客の食事の名札、オーダー票を作成。


名札を書いてる時、客の名前に『本村様 3名』というのを見つけた私。


(彼と同じ苗字じゃん?)


彼に会えない寂しさでこの客で勝手な妄想を立てたりして・・・。


そんな細かい作業をしてるとバイトがチラホラやってきてやや忙しくなる。


『あれやって』『これもやっておいて』


時間はあっという間にチェックインの3時。


旅館に着く客もパラパラやってきて客の対応、バイトの指示で手が廻らなくなった頃。


「吹雪~。お前指名で客が来た。部屋案内して来いや~~」と慌しく猛に言われる私。


(指名っちゃなんだよ?キャバクラじゃあるまいし・・・)なんて思いながら客の元へ。


『いらっしゃいませ~・・・』


私は止まった。客の顔を見て止まった。


そして自分がどこにいるのか分からなくなって旅館の看板に目を向ける。


(旅館・はまかぜ。合ってるよね?なんで??)


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