チャットは運命 【実話】

「後、俺がやっとくから教室

戻ってていいよ」

「あ、ありがと」

食べ終わった食器を持って放送室を

出ようとした。

「おい!」

「え?」

振り返ると、牛乳瓶を投げられた。

「危ねーなバカ!」

つい口が悪くなる。

悪い悪いと笑う彼。

「俺の、持ってって」

「しょうがないなぁ・・・」

口を尖らせた私に、サンキューと

またあの笑顔を向けた。

ついキュンとしてしまう。

なんだか嬉しかった。


今思えば私はこの時すでにもう彼を、

西崎秀を特別な目で見ていたの

かもしれない。


ワゴンに食器をひとつずつ戻していく。

「鈴音ちゃん♪」

聞きなれた声に名前を呼ばれ私は

振り返る。

そこには実梨ちゃんがいて

私にただ手を振っていた。

私も手を振り替えして、すぐに

その場を立ち去ろうとした。

「待って」

突然実梨ちゃんに腕をつかまれ

驚きを隠せない私。

「な、なに?」

「今度私ん家来て一緒にあそぼ?」

ニコっと笑った彼女の目は笑って

いなかった。

気持ちのこもっていない笑顔を

向けられた私は怖くなって

一言、「うん」と言って

教室に戻った。



実梨ちゃんとはクラスが違うから

あまり顔を合わさずにすんだ。

廊下に出たときたまにすれ違っても

私は気づかないフリをして

下を向いて歩いたりした。

実梨ちゃんともう関わりたくない

それが私の正直な気持ち。
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