-roop-

最期の文字


ポスターに当てた手をギュッと握りしめて、深く息を吸い込んだ。

少しだけ、傾いた太陽の光も一緒に吸い込む。


チラッと目についたベランダ。

悲しい背中と切ない煙が頭をよぎって、慌てて視線をそらした。


私は淀んだ気持ちを無視するように、気持ち悪いくらい大袈裟に身体を動かして、冷蔵庫に飲み物を取りに向かう。




カチャ…

ひんやりと漏れる冷気が肌に心地いい。

今日の朝も見たはずのマーガリンの箱に心が軋んだ。

それを振り切るようにペットボトルに入った烏龍茶を取り出す。




「……ん?」

ふと、冷蔵庫の底から白い紙切れが覗いているのが目についた。


私はペットボトルを台に置き、その紙切れを拾い上げる。

紙切れ自体はまだ新しかったが、冷蔵庫の下の埃が絡み付いていた。

まだ白い紙の色と、埃の付き方の差が不自然だった。


何か文字が書かれていたが、文字のある面が下になっていたため、埃で覆われて字が読めない。


私は少し躊躇いながらも、その埃を払った。


その紙から

次第に可愛いらしい文字が浮かんでくる…

< 132 / 293 >

この作品をシェア

pagetop