-roop-

「あ、そうだ。何か食ってくか?千夏腹減っただろ?」


「うん!お腹空いた~」


「まぁ~あんだけ宝石屋で騒げばそりゃなぁ~」


「なっ…何よ誠さんだって自分で『旦那様』って言ってたくせにっ」


「ばっ…バカ!そりゃ……本当のことだろ…?」



「………っ」


ぶつかった視線に、つい頬が赤く染まる。


明日私たちは…夫婦になる…。


こうしていると、まるで明日離れ離れになることが嘘のような気さえしてくる。


このままこの人に愛し愛されて、幸せな人生を歩んでいくのではないかと

そんな愚かな想いさえ芽生えてくる…。

隣にずっとずっと誠さんがいて、こうして笑ってくれるような気がして


そんな気がして…



けれどあのことが…

あの事実がすぐにそんな私の愚かな錯覚を切り崩す…。





明日貴方と夫婦になるのは、『私』ではなく『千夏さん』だということ。





どんなに私が強く強く誠さんを想っても、誠さんが愛しているのは千夏さん…

その事実は…決して揺らぎはしない…。
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