空色幻想曲
「バカ────ッ!!」

 けたたましい罵声とともに肘打ちを浴びせられた!

 鳩尾(みぞおち)に直撃して一瞬息が止まった。ガードをしなかったから落ちたときよりもダメージがでかい……。
 咳き込みながらふらふらと立ち上がった。

「……これが王女のすることか」

「不良騎士のあなたに言われたくないわ! 王女にこんなことする騎士なんて見たことも聞いたこともないわよ!!」

「不可抗力だと言ったろう」

 疑いの眼差し。
 そんな目をされても嘘は一つも言ってないぞ。

『不可抗力』──人の力ではどうしようもできないことをいうが、ある意味スケベ心も不可抗力だ。

 ……なんて言ったら今度は蹴られそうだから言わないが。

「一撃!」
「は?」
「『は?』じゃない! あなたに一撃喰らわせたんだから約束どおり剣の稽古つけてもらうわよ!」

 ギクリ。

「いや、おい、待て。剣の一撃じゃな──」

「剣じゃなくても一撃は一撃! そもそも初めから剣で一撃だなんて聞いてないわ!」

「しかし、だな……」

「男に二言はないわよね?」

「それは……」

「な・い・わ・よ・ね?」

 顔は笑っているのに、目が笑っていない。ハッキリ言って魔物よりおっかない。
 渋々うなずくしかなかった。
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