空色幻想曲
 不良騎士の稽古はスパルタだった。私が見こんだとおり……というか、それ以上に。

 真剣での手合わせはようやく慣れてきたけれど、張りつめた緊張感がなくなることはなかった。ほんの少しでも集中力を欠くと怒号が飛ぶ。『王女だから、女だから』という容赦はいっさいしない。

 それでこの程度のケガしかないのは、奇跡に近い。未だ彼の剣で直接つけられた傷は一つもないのだ。

 おかげで二人の修行は周りにかくし通せているわけなのだけれど。

「おねえさま、ほんとうに逢瀬ではないの?」
「ないない!」

 キッパリ否定したら、(つや)のあるくちびるをぷっくりと突きだしてみせた。

「ふぅん、つまらないわ。いつになったら、おねえさまの恋話が聞けるようになるのかしら」

「エリーゼはどうなの?」

 こっちは今ネタがないけれど、私だってこのテの話にまったく興味がないわけじゃない。

「え、わたくし? ……そうですわねぇ。気になる方はいてよ」

「ええっ、ホント!? だれ!?」

「それは……ひ・み・つ、ですわ」

「え~っ、どうしてよ~!? 私には教えてくれてもいいじゃない!」
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