空色幻想曲

†新月の闇に誘われて†

God aspect
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 猛然と暗闇の中へ飛びこんだ隊長を見送って、アルスはため息をつく。

「まいったぜ。平民のクセに物怖じしねぇ」

「むしろ平民だからか。エリーゼ公女まで巻きこむとは……恐れ入るな」

 かたわらにいる闇色の姫を気遣いながら、ベンも感心したような呆れたような息をもらした。

「わたくし、力になれるかしら……」

 思わぬ大役を任された少女は不安な胸のうちを吐露(とろ)する。

 唸る剣戟(けんげき)咆哮(ほうこう)

 最前線は隊長、副隊長率いる一番隊が引き受けているとはいえ、新月の闇にまぎれて魔族が奇襲をかけてくるとも限らない。
 そんな危機的状況にもかかわらず、ベンは甘い声音で語りかけた。

「魔族を見つけたら指し示してください。位置さえつかめれば私の弓は外しません。接近されてもアルスがいます。
 エリーゼ公女には万に一つも危害は及びませんので、ご安心を」

「おいおい、ベン! そんな大きなこと言っちゃっていいのか?」

「自信がないのか、アルス?」

「へっ、まさか!」

 余裕たっぷりで茶化しあう二人を見上げて、エリーゼはホッと息を吐く。生まれて初めて戦場に立たされたあどけない少女にとって、場違いな空気をかもし出す二人の騎士は頼もしく感じた。

 彼らの気遣いを汲み取り、持ち前の聡明さを発揮する。
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