空色幻想曲
「伏せろ!!」

 反射的に叫んで体を地に伏せた。
 頭上を旋風が走り居並ぶ大木を切り刻む!

 ──“風使い”か!

「警戒しろ! 魔族がいる!!」

 一番隊に注意を促すと、魔物の咆哮と血の雨が止んだ。向こうも警戒したか。

 俺は(まぶた)を閉じて意識を集中させた。両目であろうと片目であろうと、この深淵で視覚は役に立たない。ならば、視覚以外の五感を研ぎ澄まし体中を眼に変えよう。

 喩えどれだけ気配を消して闇にまぎれようとも、攻めに転じる瞬間の──
──風の動きを逃しはしない!

 一、二、三、四……時計の振り子のように鼓動が静寂を刻む。

 まだだ。まだ動くな。
 向こうが動き出す瞬間が、必ずある。


 必ず──……










「ごめんっ、結界がもう持たない!!」

 中枢からマリオンの悲痛な叫び。
 大気がザワリと歪んだ。
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