空色幻想曲


「あなたたち騎士の痛みだもの」


「え?」

 予想もしない言葉に面食らう。
 青い眼差しは気高い光に満ちて、今までで一番『王女』の顔だった。

「あなたは私を護るために闘ってくれるのでしょう。できれば傷ついてほしくないけど……闘う以上はきっと避けられないわ」

 少し辛そうに(まぶた)を垂れて、またすぐ毅然(きぜん)と上を向いた。

「ならせめてその痛みを、私は知っておきたい。覚えておきたい。なにを犠牲にしてあなたたち騎士が闘っているのかを……
 それが、私を護ってくれる人に対する礼儀だと思うから」

 心に……強い風が吹き抜けた。

 激しく揺さぶるように。
 それでいて、あたたかく、優しく、包み込むように……

(……やはり、君は──……)

 護られるのが当然、と澄ましているお姫様ではない。

 “慈愛の女神”。

 それは、ただ神秘的な空色の髪だけを表しているのではなかった。表しているのは、たかが一介の騎士の痛みさえ知ろうとする

 その心──……
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