君の声が聞こえる
特に雅巳の場合、時間が経ていくうちに加藤君から離れていってしまうかもしれない。

それは私にも加藤君に近付くチャンスになって、喜ぶことべきなのかもしれない。そんな風に思ってしまう自分が嫌だった。

親友も好きな人も不幸なのに、それを心の中で喜ぶ自分の醜い心がある。

それを見せつけられたような気がした。

雅巳は夏に弱い。もともと体力のない子だから、夏バテも普通の子達のものとは比較にならないほど、苦しいものになる。そんな状態で、加藤君の事を考える余裕はないだろう。

今がチャンス。

加藤君に相談に乗る振りして近付けばいい。

私の中の悪魔がそう囁いていた。

そして、私は私なりに悩み苦しんで、どう動くべきか決めた。その事を後悔する日がくるかもしれない。でも、私はこうする事しか出来ないのだ、と自分の中で結論を出した。

多分、何度同じ立場になっても同じ事をするんだろう……。


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雅巳はいいところのお嬢様だ。

というよりは、彼女の母親の実家がここら一帯の地主の一人娘なのだ。

だから、雅巳の事をとても可愛がっている。
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