君の声が聞こえる
しかし、未婚の母である雅巳のお母さんは、自分がいると周囲の人間の目が気になるといって、実家を出て雅巳とアパート暮らしをしていた。

雅巳のお母さんはお嬢様育ちだが、ちゃんと働いて雅巳を養っている。ただ、雅巳の体調が悪い時や入院した時は長期に渡って休む事になるので正規ではないらしい。

いつもパートやアルバイトという形をとっている。その事を雅巳はずっと気にしていて、いつだって無理はしないように、周囲に気を遣っていた。

私達が親しくなるきっかけだった、あの発作が起きたのに我慢していたのも、そういう事情からだということを知ったのは私が中学生になってからだった。

 雅巳の住むアパートのチャイムを鳴らして雅巳が出てくるのを待つ。

 しかし、出てきたのは雅巳ではなく、雅巳の母親だった。

「あ……雅巳はいますか?」

 てっきり雅巳の母親は仕事だとばかり思っていたので、焦ってしまった。

どうして平日の午前中に家にいるんだろう?その思いが表情に出てしまったらしい。

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