君の声が聞こえる
第三章愛と友情の狭間で……
本当に大切なもの

(by・良枝) 

 雅巳が倒れた。

 その事を知って私はすぐにでも雅巳の元に走って行きたかった。

 でも、雅巳は加藤君に抱き上げられて、そのまま、保健管理センターに連れられていった。

加藤君に抱き上げられた雅巳の顔は血の気がなくて、『死』の予感をさせた。

 思い出させるのはあの夏の日。

 初めて出会ったときの苦しそうな雅巳の顔。

 意識を手放した雅巳に苦渋の色を感じる事はできなかったけれど、『死』は雅巳にとりついて離れないような気がする。

 このまま雅巳は死んでしまうのかしら?

 私が雅巳なんていなくなってしまえばいいなんて思ったから?

 それは私の胸を締め付けるような痛みに変えた。

 それからしばらくしても、雅巳と加藤君は戻ってこなかった。それは私の不安を増幅させ、私の事を責めた。

 どうして、私は、あんなひどい事を雅巳に言ってしまったんだろう?

 雅巳がいなくなってしまえばいい、なんてどうして思えたんだろう?

 私にとって雅巳は本当に大切な人だったのに。

 体育の講義が終わった後、私はすぐに保健管理センターに向かって走っていた。
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