君の声が聞こえる
 保健管理センターの扉を帰ると若い白衣の医師が、出て行くところにぶつかった。

「君は?」

「ここに……須藤雅巳が運ばれてきたはずなんですけど」

 息を切らせながら、言うとその医師は「ああ」と頷いて穏やかな微笑みを私に向けた。

「私はこれから病院のほうに戻るつもりなんだけど、あの子ならベットで横になっている。命にかかわるような状態ではなかったから安心していいよ」

「ありがとうございます」

 私はその若い医師が指差した白いカーテンに近付いた。

 雅巳に会ったらなんて謝ろうか?などと考えながらカーテンに手をかけた時、その光景が私の目に飛び込んできた。

 目を閉じている雅巳と加藤君の顔が重なっていた。

 二人がキスしている……。

 二人は私が見ているなんて気付かずに長い時間、唇を重ね合わせていた。

 私は慌ててカーテンを戻した。

 胸がドキドキしている。

 私が見た事の意味を考えようとしたが、たった一つの答えしか浮かばなかった。

 雅巳は加藤君の想いに応えた。

 加藤君は雅巳が好きで、雅巳は加藤君が好き。

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