禁色の囚人~きんじきのとらわれびと~
「どうした?」

「別に…。」



言えない。



母親に会ったなんて。



「宮埜と一緒じゃなかったんだってな。」

「うん。…なんか、2人の邪魔してるみたいでさ。」



ちゃんと笑えてるみたい。



「そうか。」



何気ない会話だけど、神楽の声が安心させてくれる。



あたしは、ここにいるんだって。



本当の自分から、目を逸らさせてくれてるみたいで。



一緒にお風呂に入って。



いつものようにベッドで寝て。



毎日のことなのに…



安堵感に包まれてる。



朝になったら、きっと忘れられる。



夕暮れが見せた、幻だったって…

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