追憶レター
「奈々ちゃーん、そこのお皿こっちにちょうだい。」

「はーい、あのオーブン200度にセットしてもらっていいですかぁ。」

時間に追われての仕事。

毎日午前中はあっという間に過ぎ去る。

昼食は子どもたちと一緒。

ドタバタにぎやかに、慌ただしく流し込む。

「あー奈々子先生、トマト食べてなーい。
悪いんだー。」

「いいの、先生は大人だから。
それよりちゃんと前向いて食べなさい。

お箸お友達にむけないの、もぉ。」

なんてありえない受け答え。

大人って…何の根拠もない言い訳。

『先生』と呼ばれる立場にありながらも、私はその呼ばれ方が苦手だ。

そんなたいそうな人間じゃない。


しかし子どもとはなんて純粋なんだろうか。

たまにやり直したくなる。

今までの人生のグレーゾーンを埋めたいと思う。

普通に生きてきたつもりでも、どこからかまっ白ではいられなくなる。

気が付けば毎日、意もせぬ事にも頷いている自分がいる。

それが大人なのか……
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