クレーン・ゲーム

夢の向こうにはお花畑

「あぁ……クレーンが空から降りてきて町がごっそり持って行かれるよ……みんな逃げるんだ……空からクレーンが降りてくる……」

僕の事を狂っていると思うだろう。でも、大変な事態なのだ。先ほどの地震は、このホテルがクレーンで持ち上げられた時の衝撃なのだ。僕には分かる。
あの日の夜に僕がしたように、
誰かがクレーンゲームをプレイしたのだ。僕らはもう二度と、現実の世界には戻れない。現に、あたりは真っ暗だ。

「高波さん!大丈夫か!」
先ほどの年配の刑事の声が聞こえる

「クレーンが……クレーンが襲ってきた……!」

「気をたしかに!みんな一ヶ所に集まってレスキュー隊員が来るまで頑張りましょう!」
「もう手遅れだ!最期くらい……僕は一人でいるぞ!」

「そんな縁起でもない……」

「ねぇ、お兄ちゃん、クレーンがどうかしたの」

高校生くらいの青年が僕に聞いてきた。
僕は無駄だと思ったが、必死でクレーンゲームのことを話した。


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