DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
ボルグと呼ばれた男。
三十代半ばといったところだろうか……
他のケルベロス隊の兵士と比べても、一つ頭分ほど背の高い、がっちりとした体格。
ボサボサと逆立ったようにも見える茶髪が、その顔つきを更に鋭く見せる。
「アレックス・レンフィールド……」
厳しい表情のまま、今日の主役である新隊員アレックスを一瞥しながら呟き、男は隣で笑顔を見せる青年へと顔を向けた。
「隊長自ら選んでこられただけのことはあると思いますが、やはりまだ若すぎるのでは……」
その表情に浮かぶのは困惑の色。
「彼に関していえば歳は関係ない」
その困惑に応えるように、隊長と呼ばれた青年は自信ありげに再び笑みを浮かべると
「ほら」
と短く声を上げ、練兵場の中央を指差す。
そこでは、先ほど降参した兵士が退場するのを無表情で見送るアレックスの前で、新たな対戦者が槍を構えたところだった。
その場にいる者達は皆、息を呑んでその成り行きを見守る。
その顔には、皆一様に、どこか信じられないといったような……戸惑いの色が隠せない。