DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
「声をかけたぐらいで止まるわけがないだろう?」
苛立ちのこもった声で吐き捨てるように言うと、ボルグは掴んでいたアレックスの胸倉から手を離した。
「お前……」
まだ何か言いたそうではあったが、ボルグは言いかけた言葉を続けるのをやめ、ちら、とアレックスを一瞥しただけで、その場を離れて他の兵のほうへと離れていった。
アレックスはただ、その後ろ姿を黙って見送る。
こんなことは別に初めてではない。
ケルベロスに入る前に、ただの一介の兵士だった時にも似たようなことは何度かあった。
戦場で、もう助からない怪我を負った兵士よりも任務を優先すると、皆、ボルグと同じような反応を見せた。
言いたい言葉は大体わかる。
何度も聞いた言葉……
『おまえに、情はないのか?』