DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>



そんななかで育ったアレックスには、マリウスがとった行動の意味も、赤子を守るために自らを犠牲にした母親の気持ちもわかるはずもなかったのだ。

自らを危険にさらして、任務の妨げになるかもしれないのに、助かりもしない兵士をかばう意味もわからない。

当然の行動をとったはずなのに、自分を責めるボルグの気持ちも……

「後は応援と交代だ。収容者を連れて戻るぞ」

ボルグが叫ぶ声が聞こえる。

いつの間にか他の隊員も全員戻っていた。

皆、疲れきった顔でトラックへと向かう。



――人口約三千人の町リエーネ



約三時間半の捜索で収容できた人間は僅かに十数名ほど。

それが兵士達の表情を曇らせていた。

これから後の捜索で、あとどれほどの生き残りを発見できるかも、あまり期待はできない……


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