Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―
来てくれる日を指定すれば、安心できる。
本城さんは迷惑かもしれないけれど。
「うん。休みだけど……」
「じゃあ、明日来て」
明日、ね。
「来て……いいの?」
戸惑いがちに聞かれたその言葉に嬉しくなった。
来て欲しいから次を取り付けてるんだよ。
いいの?って俺に聞くってことは本城さんも「来たい」って思ってくれた?
隠しきれない笑顔を向けて頷く。
「待ってる。夕方に来てすぐ帰るってのは無しだから。出来れば午前中から来て欲しい」
少しでも、長く。
この雰囲気の中に包まれていたい。
「……分かった。じゃあ、明日は早めに来るわね?」
「ん。気を付けて帰って」
気を付けて。
本当は、時間が時間だし、いつも大丈夫か心配。
うん、と頷いて出ていく本城さん。
ドアを閉める為にくるっとこっちを向いた時、笑って手を振ってみた。
また明日。と心の中で呟きながら。
……最後に見えた、本城さんの顔は。
初めてかもしれない。
無理矢理作られたような、あの去りぎわの笑顔じゃなく、自然な、可愛い笑顔だった。