Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―





眉を歪めて思い出すように考え込む涙。




……馬鹿じゃないの。



これを書いた頃の、涙に向かって思う。




仕事用のスケジュール帳にプライベートの予定を書き込んで。


それだけ、楽しみにしてくれていたって事?









―――――――――――



『もうすぐ、クリスマスだよな』

『そうだね』




会社帰りに落ち合って夕食を食べた後の帰り道。




少し早い気もするイルミネーションを見ながら、涙が呟いた。




クリスマスも、もうすぐと言っても1ヶ月先の事。




だけど、年が終わるに連れて日が経つのもあっという間だから、もうすぐなんだ。




『今年はさ、独身最後のクリスマスじゃん?』


『何それ』




イルミネーションを見上げる涙を見る。




繋がれた右手には、涙の薬指にある指輪の感触が伝わってくる。




『だからさ、結婚する前に独身最後のクリスマスって事で初心に戻ろうと思って』


『初心?』


涙は視線を落として私を見る。



涙の髪が、イルミネーションの光によって明るく照らされている。


『そ。高校の時みたいにデートすんの。待ち合わせして』


『一緒の家にいるのに?』


『初心に戻る為だから』




そう言いながら涙は続ける。




『ここ、待ち合わせに良いな。デートっぽい。

決めた。25日は19時にここで待ち合わせ。
で、デートして、独身最後って事でパーっとクリスマスを祝おうな』









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