Winter bell
「ごめんな……」


「別に……」


晴稀の口から聞きたい言葉じゃない。


だから、罪悪感を感じて謝る彼の事が、少しだけ恨めしく思えた。


「今日は、羅夢に喜んで貰おうと思って誘ったんやけど……。嫌な思いさせたな……」


「そんな事ないけど……」


晴稀のせいじゃないやん……


あたしは泣きそうになりながら、晴稀の手を握ったけど…


冷たい彼の手が、余計にあたしの涙を外へと誘(イザナ)う。


「羅夢が行きたいって言ってたレストランやけど……。イヴに予約したから!」


「え……?」


晴稀の言葉に、目を見開きながら顔を上げた。


照れ臭そうに微笑んだ彼は、繋いでいる手をギュッと握り直した。


< 50 / 129 >

この作品をシェア

pagetop