レンズ越しの君へ
家を飛び出して、5日目。


日が経つに連れて廉への想いは募る一方で、寂しさに耐えられなくなっていた。


心の中は、後悔で溢れている。


仕事も休んでいる分、ずっと鬱に近い状態だった。


せめて仕事に行けたら、少しくらいは気晴らしが出来るかもしれないのに……


ため息混じりに鏡を見たけど、そこに映ったのはまだキスマークだらけの体…。


やっぱり、ドレスは着れない。


綾が店長に上手く言ってくれたお陰で、あたしは胃炎と言う事になっている。


だけど、いつまでもこうしている訳にはいかない。


「綾……。あたし、帰るよ……」


コーヒーを飲みながら写真集を見ていた綾に、小さく告げた。


彼女はそんなあたしを見ながら、困ったような顔をした。


ちゃんと笑ったつもりだったけど、引き攣った笑顔だったのかもしれない。


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