レンズ越しの君へ
再び店内に入って、廉と太一のテーブルに戻った。


「ごめんね」


「大変だね〜、売れっ子は!」


「今日はそうでもないよ。週末なんて、体が二つ欲しいもん」


笑顔の太一に、苦笑しながら返した。


「今の常連客か?」


「うん、そうだけど……」


廉の質問の意図がわからないまま、とりあえず答えた。


「ふ〜ん……」


すると彼は表情も変えずにお酒を飲み、あたしをまたじっと見つめた。


あたしは、この瞳が結構苦手。


それでも平静を装って、廉を見たまま話を続けた。


「どうしてそう思ったの?」


「別に……。あの人、大企業の社長ってとこだな」


廉は言って、お酒をグッと飲み干した。


「えっ、どうして?」


田島さんの肩書まで見抜いた廉に目を見開きながらも、彼のグラスに手を伸ばした。


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