レンズ越しの君へ
「あっ……!ごめんなさい、ちょっと待ってて」


黒服に合図をされて席を立ち、急いで田島さんのいるテーブルに戻った。


「ごめんね、田島さん」


あたしが申し訳なく思いながら謝ると、田島さんは優しく笑ってくれた。


「気にするな!新規の客か?」


田島さんは言いながら、廉と太一をチラリと見た。


「うん、そうみたい」


田島さんは、頷いたあたしの頭をポンポンと撫でて席を立った。


「帰るんですか?」


「仕事でトラブルがあったらしくてな……。今日は帰るよ」


「そうですか……。じゃあ、お送りしますね」


あたしも席を立ち、田島さんを入口まで送り出した。


「ありがとうございました」


「あの客の指名、絶対に取れよ」


田島さんは笑顔でそう言い残すと、慌てた様子で立ち去った。


< 12 / 404 >

この作品をシェア

pagetop