レンズ越しの君へ
「まぁ、嫌なら別にイイけど……」


タバコに火を点けた廉に向かって、力いっぱい首を横に振る。


「すぐに支度するねっ♪」


あたしは言い終わるよりも早くベッドルームに戻って、急いで出掛ける準備をした。


久しぶりのデートに、自然と心が弾む。


ウキウキしながら、メイクをしていた。


廉に『可愛い』って言って貰いたくて、メイクが念入りになる。


お気に入りのグロスでツヤツヤになった唇や、綺麗に整った睫毛。


鏡に映るそれらを見て、すごく満足していた。


「澪、まだかよ……?」


そう言ってベッドルームに入って来た廉は、待ちくたびれてしまったのか、少しだけ不機嫌だった。


「ごめんね!後は着替えるだけだから、もうちょっとだけ待ってて!」


彼の様子を窺いながらクローゼットを開け、服を選び始めた。


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