レンズ越しの君へ
退店が決まってから、あっという間に1週間が過ぎた。


あたしは、今日で『Princess』を辞める。


辛かった事、苦しかった事。


悲しかった事、陰で泣いた事。


そして…


嬉しかった事、幸せだった事…。


ここでの思い出を噛み締めながら、念入りに最後のメイクをした。


ドレスは、廉と初めて出会った時に着ていた物を選んだ。


「ユイ、行こっ♪」


綾に笑顔で促されて更衣室を後にし、ホールを横切って入口のドアの前に並んだ。


この扉が開いたら…


そこは、怪しい光を放つ危険な夜の世界。


「いらっしゃいませ!」


キャバ嬢としての自分(アタシ)の最後の1日が、いつものように煌びやかに始まった。


< 245 / 404 >

この作品をシェア

pagetop