レンズ越しの君へ
「怒ってないから……」


「本当に……?」


前に視線を戻して無愛想な返事をした廉に、もう一度尋ねた。


「澪……」


信号待ちで車を停めた彼は、ため息混じりに呟いた。


「だって……」


「怒ってねぇから、そんなに心配するな」


「でも……」


不安が消えないあたしは、廉を見つめた。


「はぁ……」


もう一度大きなため息を落とした彼は、呆れたように口を開いた。


「怒ってねぇよ。すっげぇムカついたけど……」


少しだけ照れ臭そうな廉を見て、思わずクスクスと笑ってしまった。


「何だよ?」


子供みたいな彼の態度に、胸の奥がキュンと鳴いた。


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