Love story's
感傷に浸るように桜の木に向かって手を伸ばすと、フワリと降って来た花びらが広げた手の平の上に落ちた。


あまりのタイミングの良さに、何だか励まされた気がする。


満開に咲き誇ったその瞬間から、消えゆくように散り始めた桜。


儚く、だけど美しいそんな桜のような女と出会うのは、数年後の事…。


そして、本気の恋愛なんて無理だと思っていたのが嘘のように、何よりも大切だと思う程の愛おしさを知るのは、そこから更にもう少し先の事…。


今はまだ何も知らない俺は、柔らかな花びらを雪のように降らせる桜に小さな笑みを零した――…。





             END.


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