ひとひらの願い―幕末動乱―
第6章 鬼も仏の如く
『――お前はやっぱり女だ。こんなに体力もない。使えねぇヤツだよ、お前ぇは――…』

『副長ッ――…』



この感覚―――…

身に覚えもない、今までに全く経験したことのないもの。


ガバッ


だから私は、怖くて飛び起きた。

感じたことのない怖さが、頭の中に描かれたから――…


「―夢、か……」


そっと呟く。
今の自分の状況も知らないままに。


「…起きたか」


左からの強い視線と、その低音で発せられた問いの言葉に私は驚き、体がビクッとした。


「あ…れ!? ――副長!?」

「あ? そうだが」


なんと驚くことに、ここは副長の自室だった。

文机の上に小さな一つの蝋燭を灯し、何かを書いているようだった。

私はというと、畳の上に敷かれた一枚の布団の上に、しかもちゃんと掛け布団までかけられて……寝ていたみたい!?


「あ、ありがとうございます…」


とりあえず、ここまで私の重い体を運んでくれたことなどに、お礼だけしてみる。


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