悠久の貴女へ
蝉時雨の中で
蝉時雨の中、私は光縁寺にある彼女の墓に向かっていた。


私は沖田 総司。

護りたい人も、護りたかった人もいる。


今日は、あの日護れなかった、大切な仲間の元に。

山門をくぐり、足早に彼女の元へと急ぐ。


ある墓の前で止まり、屈みこむ。



「―織さん……」



高蔵 織(たかくら しき)。

池田屋の二階で、彼女は刺され、死亡。


…表向きはそうなっている。


実際は違うんだ。

でもそれは、あの時あの場にいた私と土方さんしか知らない。


信じられない光景だったのだから――――…


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