女子高生と魔法のランプ
おやおや、

未知との遭遇

日が傾き、差し込んで来る光が朱くなりはじめた頃、実家の古い蔵の中で椛山 瓜(カバヤマ ウリ)は少し高い位置にある窓を見て、スカートのポケットから銀色の懐中時計を取り出した。

高い物ではない。
バイトをしない瓜の財布からでも及第点を得るそこそこの値段の物で、腕時計を好まないという理由で持ち歩いているのだが、周囲は彼女の少し風変わりな印象を深めただけだった。


鎖の繋がる金具の内側にあしらわれた突起を押し込むように強めに押すと蓋は軽い音とともに弾かれたように開き、控えめだが素っ気なくない針が夕方と認識出来る時刻を示している。


また居すぎてしまったか、と後悔するでもなく淡々と内心で呟く。



父方の祖父母と同居しているため、瓜は父の実家で生まれ育った。
名付け親は旅行好きな祖父だったそうで、特に仲は悪くない。

「おまえもいつかはお父さんの下着と一緒に洗濯しないで!とか言うのかな…」という父親の不安をよそにとくに大人達に過敏な反抗を見せる事なく育った。


人嫌いではないが、他人の目に入らない所で一人になるのが好きで生まれる前からあったこの蔵は特に足を運ぶ事が多いのだった。



何となくお腹もそれなりに空腹な気がする。
のそりと立ち上がると長い髪や制服に付いた埃を落とす目的で頭を振ってみたり身体を揺すってみたりするが、さほど効果は見られない。

ひとつひとつの動作がゆっくりだからだろう。
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