王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
「…なぁ、ところでよぉ…」
声を掛けてきたテイシンが、急にソワソワし始める。
「?…どうかしたのか?」
なかなか本題に入らないのでこちらから促してやる。
頬を掻き、視線を反らしてもごもごと聞いてきた。
「そのっ…どうだったよ?
……この前のっ……」
この前と言われて思い当たることといえば、ニッツーのことだろう。
(そんなに気になるなら、紹介なんてするなよ……)
心の中で溜息を吐く。
少々、この歳上の男を苛めてみたくなってしまった。
ワザと、舌舐めずりでもしそうな厭らしい笑みを浮かべ、テイシンに告げる。
「…あぁ、ニッツー…か。
善かったよ。
見た目も中身も、…勿論…あっちの具合も、ね…」
聞いた時の、テイシンの何とも複雑な表情…。
ドルメックに見られていることに気付き、取り繕う様に引きつった笑顔で捲し立てる。
「…っそ、そうだろ!
すっげぇイイ女なんだ、アイツ!
なんか機会があったら、ご贔屓にしてやってくれよ?」
ドルメックに向けられた笑顔の、目が笑って無い。
追い討ちの様に、ドルメックも相槌を打ってやった。
「そうだな、良い女だった。
向こうも満更じゃ無かったみたいだしな…。
置き手紙に、また声掛けてって書いてあったよ」
こちらに顔を向けられず、俯いてしまったテイシン。