ラストメッセージ
美乃の病室は個室だったけれど、いつもたくさんの人がいた。
彼女を訪ねる人は友達や見舞い客だけでなく、同じ病院に入院している患者もいた。


美乃と仲のいい患者の年齢層は驚くほど広く、幼い子どもから俺たちの祖父母くらいの年代の人たちまで、とにかく彼女は老若男女問わず人気者だった。
時には、美乃自身が他の病室に出向くこともあって、そういう日には彼女を探し出すのに苦労した。


美乃が入院している病院は県内でも有名な総合病院で、院内はかなり広い。
もっとも、院内では入院期間が長い美乃のことを知らない人はあまりいないから、彼女の居場所はだいたいすぐにわかるのだけれど。


ある日、驚いた事があった。

その日も病室にいなかった美乃を探していると、看護師の内田さんから屋上だと教えてもらった。
内田さんは五十代くらいのベテランで、美乃を担当している期間が長いからか、彼女のことをよく理解している。


「びっくりするかもね」


意味深に微笑む内田さんにお礼を言って屋上に向かい、ドアを開けた瞬間。

「ローン!」

美乃の楽しげな声が聞こえてきた。


ローン……?


首を傾げた俺は、目の前の光景を見て内田さんに言われた通り、目を見開いて驚いた。
そこには、三人の中年男性とテーブルを囲み、麻雀をする彼女の姿があった。


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