ラストメッセージ
第十三章 ふたりきりの夜
帰宅する前に、近所のスーパーに寄った。


「さっきね、ちょっとジュエリーショップ見たり、カフェでケーキ買おうか悩んだりしてたんだ」


美乃は映画館から戻ってくる時に、色々と物色していたらしい。


「そっか。心配だったけど、久しぶりの外出だもんな」

「外泊だよ!」

「はいはい。でも、ケーキは買わなくて正解だったよ」

「どうして?」

「俺がちゃんと予約して買っておいたから。あとで届くよ!」

「本当に⁉」

「まぁ、あのカフェのケーキじゃないけど……。雑誌に載ってた店のケーキだから」

「うん! ありがとう!」

「どういたしまして! それより、夜はなにが食べたい?」

「なんでもいい!」


満面に笑みを浮かべた彼女が、俺の腕にしがみついた。
一番困る返答に苦笑を漏らしながらも買い物を済ませ、家に向かった。


「うわぁ〜! 結構綺麗だし、広いんだね!」

「そうか? まぁ必死に片付けたけどさ」

「見られたくない物でもあったの?」

「いっぱいあるな〜。……特にエロ本とか」

「もうっ! 本当にエロ親父なんだから!」


俺たちは顔を見合わせて、ケラケラと笑った。


「あっ、ウェディングドレスの写真だ! ちゃんと飾ってるんだね!」

「当たり前だろ!」


キッチンに買って来た食材を並べると、美乃がやって来た。


「私も手伝うよ!」

「いいから、その辺に座ってろ」

「なにかしたいの!」

「美乃って、料理できるのか?」

「できない……です……」


彼女はポツリと答え、膨れっ面をして拗ねた。


「わかったよ! じゃあ、野菜の皮を剥いて、適当に切って」

「わかった!」


腕捲りをした美乃が、嬉しそうに野菜を取った。
そして、彼女は楽しそうにクリスマスソングを歌いながら、野菜の皮を剥き始めた。

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