REVERSI

* * *

「軽い貧血が出てますから、お薬出しときますね」

クリニックの医師はにこやかに笑って、特に異常はありませんよと安心感を与える言葉をくれた。一応、午前中は会社を休んで医院にきた。検査結果は僚があの渋みのきいた声で『連絡しろ』と一言。この医院を紹介してくれたのも僚。なんか、お母さんみたいだ。そして、


「久瀬のあんな慌てた顔、何年か振りに見ましたよ」

フフと眼鏡の奥の瞳を細めたのは目の前の医師。どうやら、昨日僚が呼んだ“医療従事者”は、この人らしい。ネームプレートに『医院長』と書かれてある。若いのにすごいな…いや、じゃなくてなんか申し訳ありません。
あたしがうなだれて頭を下げると、その人はまたふわりと笑う。


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