REVERSI

───僚は日本を離れない


体の力がストンと抜けていく。


本当に、ここまで強引に背中を押されるとは思わなかった。京ちゃんにしても、貴子さんにしても。

それから僚が落とす短い言葉を必死に繋ぎ合わせると、『高遠』は医院長さんで、高遠さんがさっきあたしに言った『散々たきつけられましたからね』は、僚にって事で、貴子さんと医院長は、すれ違いとか妙なプライドとかでお互いを想いながらも、嘘ものの『恋人』をしていたらしい。詳細はよく分からないけど。医院長、もとい高遠さんを旅立つ貴子さんの元に連れてきたのは僚。



「あ、れ?結婚は?」


確かに貴子さんは僚と結婚する、と言ったけれど、


「ああ、水面下では進んでいたようだが、高遠が本気になったならそう大した事じゃない。相手が俺から、高遠に変わるだけだ。それも一番良い形で。まあ、貴子はさっさと渡米したからな。高遠に後は任せる」



それよりも、と僚は片方だけ眉を上げる。悪戯に光る瞳が綺麗で、薄い唇が艶やかに曲がった。





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