家に帰るといつもは誰かしらリビングにいて、明るく出迎えてくれるのに、今日は暗く、静か。
透尚は何処にいるのだろう。
今日、4時間目が自習になって、いつの間にか透尚がいなくて、昼休みになっても帰って来なくて心配してずっと探していた。
理科準備室に行ったと情報を聞いて向かえばすれ違い。
やっと電話が掛かってきたら帰るという。
つじつまは合う話しの内容だけど、なんだか透尚の様子がおかしい気がする。
慌てて帰ろうとすると担任に見付かって教室に連れて行かれて授業を受けてしまった。
やっと家に帰れた。
透尚は何処に居るのだろう。
普段はお互いのプライバシーもあるから部屋の行き来は余り無い。
2階に上がり、透尚の部屋に入る。
明るい日差しが1番気持ち良く入る部屋。
白いベットは使われた形跡がない。
そこで気が付く。
隣の永久の部屋に行くと遮光カーテンで薄暗い。
ベットに近付くと端の方に小さな固まり。
透尚だ。
猫みたいに落ちそうなくらい端で丸くなっている。
もっと堂々と寝ていいのに。
もう何歩か近付いたら飛び起きるだろう。
小さな顔が毛布から半分覗いてる。
永久のベットだから安心してるみたいで普段より幼い表情。
「透尚大丈夫?なんかあったらちゃんと言うんだよ」
起こさないように囁くと、透尚がゆっくり寝ているようなので静かに部屋を出る。
永久と春も今、『切石』が忙しくて手が離せないだろう。
とりあえず透尚からは連絡しないだろうから永久にメールする。
全く頼ってこない透尚に寂しさも感じるけど自分も弱い自分をさらけ出して頼れるかと聞かれれば、否、無理だろう。
お互い弱味を見せる事を嫌う。
傷は隠して平気なふりして周りと対等でありたい。
それが自分を守る防御だと今だに体が忘れてくれないから。
なので自分なりの手助けをする。
純粋で優しい透尚を、私は嫌いじゃないからね。

< 13 / 28 >

この作品をシェア

pagetop