愛の毒が廻る頃には 【超短編集】
ザワザワとした会場の中で、恭子は素早く席を立ちマイク前に立った。

これからスピーチをするはずだった新郎の友人は訳が判らず、予想外の展開にオロオロしている。

マイクの前に平然と立った恭子を、新郎の一茂は確認したようだった。

そして新郎の一茂はそのまま冷水を被った様に固まり、凍りついた。

式場の司会進行役は恭子が一体誰なのか、全く気づいていない。

十年も付き合ってきた自分を振って“違う女”と結婚する新郎の前で、その振られた女がスピーチをするなどとは、誰が予想出来るだろう。



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