先生……

家庭訪問

――――――

時計は夜9時を指していた。

先生もあたしも黙ったまま。

聞こえるのは車のエンジンの音とエアコンの音だけだった……。

『亜樹へ。
サラダとオムレツは温めて食べて下さい。
トーストは冷めるので自分で焼いて下さい。

今日もいつも通り何時に帰ってくるか分かりません。
でもきっと、亜樹が寝た頃に帰ってくると思います。
そう、今日で亜樹も16なのね。
お金をいつもより多めに入れておきます。
これで好きなものを食べておいて下さい。
もし足りないようでしたら、何かメモにでも欲しい分だけ書いておいて下さい。』

ズキン、ズキン。

別に、いつもの事なんだ。

だけど、やっぱり嫌なの。

なんでこんな、他人行儀なんだろう。

なんであたしに敬語使うの?

そればっかりが頭に浮かんで。

いつも通りの内容なの。

それはわかってる。

……だけど。

毎年この日だけは違ったのに。

ご飯を食べに行けるのが嬉しかったんじゃない。

楽しみだったんじゃない。

お母さんと二人で過ごす。

その事が嬉しかったの。
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