先生……
だけど、そんな事言えないよね。

ただでさえ、迷惑掛けてるのに。

一瞬言葉に詰まったけど、あたしは先生に迷惑掛けた生徒だから。

だからちゃんと、『迷惑掛けた生徒』しよう。

「…はい。
あの、玄関まで一緒に行きます。」

「ありがとうございます。」

玄関までは、いつもよりゆっくり歩いた。

少しでも長く一緒にいたかったから。

途中お母さんが来たけど、そのとき以外は二人の時間が嬉しかった。

「あ、先生。
本日は本当に御迷惑をお掛けしました。
そして、ありがとうございます。」

「いえ、こちらこそ。
では、失礼します。」

ガチャッ

外に出ちゃった。

もう、この時間は終わり。

「あの、今日は本当にありがとうございました。」

「いやいや。
僕は何もしてないですよ。」

ううん。

そんな事ない。

全然そんな事ない。

だって、あたしを探してくれた。
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