僕等がみた空の色
第17楽章 きっと曖昧で。





―――――――――――

―――――――





指をひたすら動かす。


跳ねる、はねる。





譜面はもう覚えた。

あとは表現するだけ。




「……ストップ!」



椎名くんの鋭い声で我にかえる。



「ピアノとずれてるので、気をつけて。んじゃ、もう一回いきます」



その言葉にあたしだけが小さくはい、と答える。

今のは完全にあたしがはしった。

曲にのめり込んでしまい、椎名くんの指揮はおろか、周りなんて全く見ていなかったあたしの失態だ。




今度は指揮をよく見て、テンポキープしたが、すると指がもつれることが多々あった。






「……じゃ、今日はここまで」




椎名くんの言葉を区切りに、合唱メンバーはぞろぞろと体育館を出て行く中、あたしは自己嫌悪に陥っていた。






< 238 / 275 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop