僕等がみた空の色
もうここで帰ってしまおうか。
たいして真面目なわけではないあたしはそういえば、と思った。
もっと早くこうしていればよかった。
汐に心配かけたくないし、連絡はあとから汐に聞けばいい。
そう決意して席を立ったら、気付いた結城が尋ねてきた。
「楠、どうした?」
「あ…、いや…」
本当のことなど言うつもりは毛頭ないが、だからといって適当な理由が見当たらず口ごもっていると、また結城が口を開いた。
「あー、トイレ?多分もうすぐ先生来るから、我慢したら?」
そう爽やかに言ってのけた結城は果たして本気か、からかったのか。
あたしが言葉を失くしてかたまっていると、結城の前の席の男子が慌てて結城をつついた。
なんだよ、ときょとんと友達に聞き返した結城には、デリカシーのかけらもないに違いない。
前の席の友達もうなだれている様子から、天然……いや、ただの馬鹿だと分かったが、だからと言って許せるほどあたしは寛大ではない。
誰だってそうだろう、この場合。
何も言わないあたしを、結城は頭の上にはてなマークを浮かべながら見つめる。
「……結城くん」
「ん?」
無垢な笑顔を向けてくるが、今となってはそれもいらだたしい。