Devil†Story
それから暫くの間、4人は変わり鬼をしていた。ロスが鬼になったのは初めの一回だけで、それ以降は誰にも捕まらずにのらりくらりと躱していた。そんな4人の様子を尻目に物語が佳境になってきた小説の字を追っていた。なんだかんだロスも楽しんでいるのか、クロムの側に戻ってくることもなく、遊びを続けていた。年甲斐もなく楽しむような声が辺りに響いており、桜の花びらの間を駆け抜けていった。その桜の花びら以外はクロムの側にないはずであった。
「………なんだ。用があんならさっさと言え」
しかし。それにも関わらず、声を掛けるとベンチの後ろから輝太が出てきた。
「凄い!静かにしてたのにバレちゃった」
「バレバレだっての。…それより遊んでたんじゃねぇのか」
「やっぱりお兄ちゃんは凄いなぁ!遊んでたけど、疲れたからタイムしてきた!」
そう言って隣に座る輝太を横目で見てから、遊んでいる3人を見る。鬼であろう麗弥を軽く遇らうロスの姿と、楽しそうに笑う稀琉が目に入った。
…なんで輝太がいねぇのにいい歳こいた野郎3人だけであんなに盛り上がってんだよ。特にロス。悪魔のくせして馴れ合いやがって、バカじゃねぇの。
あまりのくだらなさに溜め息をつく。ついた溜め息は風によって桜の花弁と共に飛ばされていったように感じた。
「お兄ちゃん達、僕より楽しそうにしてるね!」
「そうだな。ガキはどっちだっての」
「アハハ!」
そう笑う輝太は遊ぶ3人の姿をニコニコしながら見ていた。気持ちが昂っているのか、地面についていない足を交互の揺らしていた。対してクロムは呆れたように溜息をついてから、小説の字を目で追い始める。先程のように静かさが辺りを支配していた。そこにある音はページを捲る紙の音や風の音、3人の声だけとなる。
「………」
輝太が手弄りをしつつ、クロムの様子を伺っていた。モジモジとしている事に気付いていたが、敢えて気付かないふりをする。少しの間の後、深呼吸をした輝太は口を開いた。
「…ねぇ、クロムお兄ちゃん」
「なんだ」
「今日で…最後なんだよね?一緒に遊んでくれるの」
輝太の言葉に文字を追っていた視線が一瞬止まる。しかし、すぐに元通りに字を追い始める。
「……誰かに言われたのか」
「うん…。ロスお兄ちゃんから聞いた」
あいつ…。余計な事を。どういうつもりでペラペラと喋ってるんだか。まぁ、どうせ嫌がらせのつもりなんだろうがな。
再び溜息をついた後に「そうだな。怪我が治ったから、前のように明日からは仕事に戻るだけだ」と一言だけ返す。
「そっか…。怪我、治ってよかったね」
言葉ではそう言っているものの、低く小さな声に横目で輝太を見るとあからさまに落ち込んでいた。
「…俺は来ないが、稀琉や麗弥は変わらず来るだろ」
「うん……」
返事をするものの、輝太の表情は変わらなかった。その表情の中に言いたい言葉が渦巻いているのは目に見えて感じ取れた。
……チッ。
内心舌打ちをしたクロムは一呼吸置いてから口を開いた。
「……なんだ。言いたいことがあんならハッキリ言え」
「!」
クロムの言葉に視線を向ける。こちらは見ていないが、心なしか普段よりも字を追っている視線がゆっくりに感じた。そのことで意識を自分に向けていてくれていると思った。それでも勇気が出ずにいた時であった。
ーービュウ
「あ…」
花嵐が吹き、視線を向けるとある桜が目に入った。その桜を見て数日前の記憶が輝太の頭の中に流れ込む。
ーーーー「"初桜“?」
「そうだ。その年に初めて咲いた桜の事を言う」
ベンチに座って居た輝太が聞き返すとクロムがそう答えた。輝太がちょうどベンチの正面の桜が初めて咲いた桜だったっと話すと、クロムがその言葉を出したところから始まった。
「そうなんだ!でも…初めて咲いた桜じゃダメなの?」
「ダメも何も表現の1つなだけだからな。それでもいい」
「へー!他に何か意味があったりする?」
「そうだな。初桜の言葉に意味には全てのはじまりとか第一歩だな。はじめての事をする奴の背中を押すって表現に使われたりするな」
「応援してくれる言葉なんだね!」
「簡単に言えばそう言う事だな」
「いい言葉だね!!僕もけん玉とかはじめてすること多かったから応援してくれてるかな?」
「さぁな。だがお前がそう思うならそうなんじゃねぇのか。相手は物言わぬ植物だからな」
「ちょっと!もっと優しい言い方はないの!?」
ぶっきらぼうの返すクロムに注意する稀琉。いつもの光景であったが、そこに小さな客が風とともにやってきた。
「あ」
それは輝太がこの公園で初めて咲いたのを確認した桜の花弁であった。目の前の木から飛んできたので間違えない。それを見た輝太は、まるで桜が先程の言葉を肯定してくれているように感じて嬉しくなった。それを2人に伝えたくて「喧嘩しないでー!」と間に入っていった。
ーーー「!」
桜の木を見つめていると、花嵐が桜の花弁を攫ってきた。同じようなシチュエーションに思わず息をのむ。自然が生み出した偶然の産物であることは、こどもである、輝太にも頭の何処かで理解していた。それでも純粋な輝太の心は自然の音に耳を傾け、「背中を押してくれている」と感じていた。この中では輝太にしかない感性である。その初桜の花弁に勇気をもらった輝太は深呼吸をしてから口を開いた。
「……僕は。クロムお兄ちゃんとも会いたい」
「………」
「忙しいのは分かってるし、クロムお兄ちゃんはここに来るのが好きじゃないのも知ってるけど…。会いたいよ。だって………だってクロムお兄ちゃんのことも大好きだもん」
ギュッと拳に力を込めながら震える声で本心を搾り出す。その輝太の心は言葉としてクロムの耳に届けられた。
「………なんだ。用があんならさっさと言え」
しかし。それにも関わらず、声を掛けるとベンチの後ろから輝太が出てきた。
「凄い!静かにしてたのにバレちゃった」
「バレバレだっての。…それより遊んでたんじゃねぇのか」
「やっぱりお兄ちゃんは凄いなぁ!遊んでたけど、疲れたからタイムしてきた!」
そう言って隣に座る輝太を横目で見てから、遊んでいる3人を見る。鬼であろう麗弥を軽く遇らうロスの姿と、楽しそうに笑う稀琉が目に入った。
…なんで輝太がいねぇのにいい歳こいた野郎3人だけであんなに盛り上がってんだよ。特にロス。悪魔のくせして馴れ合いやがって、バカじゃねぇの。
あまりのくだらなさに溜め息をつく。ついた溜め息は風によって桜の花弁と共に飛ばされていったように感じた。
「お兄ちゃん達、僕より楽しそうにしてるね!」
「そうだな。ガキはどっちだっての」
「アハハ!」
そう笑う輝太は遊ぶ3人の姿をニコニコしながら見ていた。気持ちが昂っているのか、地面についていない足を交互の揺らしていた。対してクロムは呆れたように溜息をついてから、小説の字を目で追い始める。先程のように静かさが辺りを支配していた。そこにある音はページを捲る紙の音や風の音、3人の声だけとなる。
「………」
輝太が手弄りをしつつ、クロムの様子を伺っていた。モジモジとしている事に気付いていたが、敢えて気付かないふりをする。少しの間の後、深呼吸をした輝太は口を開いた。
「…ねぇ、クロムお兄ちゃん」
「なんだ」
「今日で…最後なんだよね?一緒に遊んでくれるの」
輝太の言葉に文字を追っていた視線が一瞬止まる。しかし、すぐに元通りに字を追い始める。
「……誰かに言われたのか」
「うん…。ロスお兄ちゃんから聞いた」
あいつ…。余計な事を。どういうつもりでペラペラと喋ってるんだか。まぁ、どうせ嫌がらせのつもりなんだろうがな。
再び溜息をついた後に「そうだな。怪我が治ったから、前のように明日からは仕事に戻るだけだ」と一言だけ返す。
「そっか…。怪我、治ってよかったね」
言葉ではそう言っているものの、低く小さな声に横目で輝太を見るとあからさまに落ち込んでいた。
「…俺は来ないが、稀琉や麗弥は変わらず来るだろ」
「うん……」
返事をするものの、輝太の表情は変わらなかった。その表情の中に言いたい言葉が渦巻いているのは目に見えて感じ取れた。
……チッ。
内心舌打ちをしたクロムは一呼吸置いてから口を開いた。
「……なんだ。言いたいことがあんならハッキリ言え」
「!」
クロムの言葉に視線を向ける。こちらは見ていないが、心なしか普段よりも字を追っている視線がゆっくりに感じた。そのことで意識を自分に向けていてくれていると思った。それでも勇気が出ずにいた時であった。
ーービュウ
「あ…」
花嵐が吹き、視線を向けるとある桜が目に入った。その桜を見て数日前の記憶が輝太の頭の中に流れ込む。
ーーーー「"初桜“?」
「そうだ。その年に初めて咲いた桜の事を言う」
ベンチに座って居た輝太が聞き返すとクロムがそう答えた。輝太がちょうどベンチの正面の桜が初めて咲いた桜だったっと話すと、クロムがその言葉を出したところから始まった。
「そうなんだ!でも…初めて咲いた桜じゃダメなの?」
「ダメも何も表現の1つなだけだからな。それでもいい」
「へー!他に何か意味があったりする?」
「そうだな。初桜の言葉に意味には全てのはじまりとか第一歩だな。はじめての事をする奴の背中を押すって表現に使われたりするな」
「応援してくれる言葉なんだね!」
「簡単に言えばそう言う事だな」
「いい言葉だね!!僕もけん玉とかはじめてすること多かったから応援してくれてるかな?」
「さぁな。だがお前がそう思うならそうなんじゃねぇのか。相手は物言わぬ植物だからな」
「ちょっと!もっと優しい言い方はないの!?」
ぶっきらぼうの返すクロムに注意する稀琉。いつもの光景であったが、そこに小さな客が風とともにやってきた。
「あ」
それは輝太がこの公園で初めて咲いたのを確認した桜の花弁であった。目の前の木から飛んできたので間違えない。それを見た輝太は、まるで桜が先程の言葉を肯定してくれているように感じて嬉しくなった。それを2人に伝えたくて「喧嘩しないでー!」と間に入っていった。
ーーー「!」
桜の木を見つめていると、花嵐が桜の花弁を攫ってきた。同じようなシチュエーションに思わず息をのむ。自然が生み出した偶然の産物であることは、こどもである、輝太にも頭の何処かで理解していた。それでも純粋な輝太の心は自然の音に耳を傾け、「背中を押してくれている」と感じていた。この中では輝太にしかない感性である。その初桜の花弁に勇気をもらった輝太は深呼吸をしてから口を開いた。
「……僕は。クロムお兄ちゃんとも会いたい」
「………」
「忙しいのは分かってるし、クロムお兄ちゃんはここに来るのが好きじゃないのも知ってるけど…。会いたいよ。だって………だってクロムお兄ちゃんのことも大好きだもん」
ギュッと拳に力を込めながら震える声で本心を搾り出す。その輝太の心は言葉としてクロムの耳に届けられた。