Devil†Story
「それって絶対音感やん!なんなん、この人!どんだけ完璧なん!?」

「凄い!楽器弾けるなんて!」

2人共、キラキラした顔でクロムを見た。

「あっ、いや…。もう…全然弾いてねぇから…」

そんな2人の視線を避けるようにクロムは目をそらした。

「えっ?でも、お前弾けるじゃ――「だから、余計なこと言ってんじゃねぇよ!」

「!」

クロムがロスに向かって怒鳴った。いつもの、口喧嘩のような感じではない。本当に怒ってるようだ。

正直、ここまで自分の本心を出したクロムはあまり見たことがない。

一気にその場の空気が悪くなった。

「あっ…と、クロム…」

「!」

ハッとしたような顔で稀琉の言葉に反応した。

「あー…いや、悪い。マジで…もう何年も弾いてねぇし……そんな好きなもんじゃないから…さ」

そう言うクロムの表情がいつもより少しだけ悲しげに見えた。

なんとなく、その話題はクロムにとってタブーなものだと悟った。

「クロム!」

「!」

麗弥の呼ばれ、クロムは麗弥を見た。すると……

「いー」

麗弥が両手で左右に口を引っ張って、変な顔をしていた。

「れ…麗弥?」

「のうら?おもひひょいひゃろ?(どうや?面白いやろ?)」

「………」

バシッ!

「いった!」

暫くその顔を見た、クロムは麗弥の頭を叩いた。

「いきなり何するん!?」

「いきなり何するは、俺の台詞だ。何が“面白いやろ?”だ。馬鹿か、テメェ。ガキじゃねーんだよ、このおめでた眼帯シスコン野郎」

呆れたように言うクロム。いつも通りの表情だ。

「シスコンちゃうわ!」

「シスコンだろ。姉貴の胸でピーピー泣く甘ったれ」

「いつの話してるん!てか、誰の為にやったと思っとるん!?」

「やかましいわ。つーか、そんなに変な顔したいんなら…俺がいつでも可笑しな顔にしてやる」

そう言うとクロムは麗弥の頬をつまんで引っ張った。

「いひゃひゃひゃ!ひぎひぇる!ひぎへるっへ!(いたたた!ちぎれる!ちぎれるって!)」

「さっきよりよっぽどキモイ顔だぜ?」

「ひもくふるひゃめひひたんららいっへ!いひゃひ!もうひゃめれ〜!(キモくする為にしたんじゃないって!痛い!もう止めて〜!)」

ニヤリッと笑うクロムに涙目で訴える麗弥だった。
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