やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
「・・・もしかして、銀行強盗ですか?」
初老の警備員が、お爺さんに尋ねた。
周りの雰囲気は、強盗にあっている銀行の雰囲気ではなく、どこかほのぼのとその様子を見ている。
「そうです。誠にご迷惑をお掛けしますが、お金を出してもらえませんかのぉ?」
お爺さんの包丁を持っている手は、震えていた。
ただ、それは、緊張をしているから震えているのか、普段からそうなのか、判断がつかないほど年老いているお爺さん。
「・・・お爺さん、どうしてお金が必要なんですか?」
私は、そのお爺さんを見ているといたたまれなくなって、つい口を出してしまった。
「そ、それは、孫が電話してきて、お金がないと、こ、殺されるいうとりますのじゃ。」
お爺さんの言葉に周りの人の視線が交わる。
みんなの考えは同じだった。
私は、代表してお爺さんに聞いた。
「それは・・・オレオレ詐欺じゃないんですか?」
「お、オレオレ詐欺?」
お爺さんは、私の言葉に首をかしげる。
「はい。オレオレ詐欺です。お爺さんのお孫さんになりすまして電話を掛けて来て、お金を振り込ませるっていう手口の詐欺です。」
私は、お爺さんにもわかりやすいように、なるべく簡単に説明した。