やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】


「す、すいません。すぐに1,000万円作りますから、待ってください。」



お爺さんが、サブに頭を下げる。



周りにいた人々も、サブとお爺さんの様子に気づき注目し始める。



「サブさん、注目されてますよ。」



私は、周りの人々に視線に気づき、サブの袖を引っ張りながら、小声でサブに声を掛ける。



「爺さん、何言ってるんだよ?別に俺は、取り立てに来たわけじゃないよ?」



サブも、周りの様子に気づいて、少し焦った様子でお爺さんに言った。



その時、私にもお爺さんの懐に光る物があるのが見えた。



それは、サブの言ったとおり、包丁だった。



「あの~どうかなさいましたか?」



初老の警備員が、サブとお爺さんのただならぬ様子に気づき話掛けてきた。



「いや、何でもないから、来なくてもいいよ。」



サブが、動揺した様子で初老の警備員に言う。



「いえ、でも、何かもめてらっしゃいますよね?」



当然、警備員が、チンピラの様な格好をしているサブの言う事を信じるはずはなかった。



その時、お爺さんが、いきなり懐から包丁を取り出して、警備員に向って突きつける。



「す、すいませんが、お金を出してくださいませんかのぉ。」



強盗らしからぬ丁寧な口調で言うお爺さん。



「・・・・警備員に言ってどうするんだよ・・・・。」



サブの哀しそうなつぶやき。



そして、そのサブのつぶやきを聞いた周りの人は、確かにとうなずいた。

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