やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
「中の銀行強盗に告ぐ。周りはすでに包囲されている。諦めて大人しく出てきなさい。」
銀行の外から拡声器を使った警察官の声が響いてきた。
「お兄ちゃん!大変だよ!もう、包囲されちゃってるんだって!」
焦ったような声でミチが、もう一人の銀行強盗に言った。
「落ち着けよ、ミチ。お兄ちゃんに秘策があるから。」
自信満々に答えるお兄ちゃんの銀行強盗。
「さすが、お兄ちゃん!それで、どうするの?」
「それはな、警察官がいなくなるまで、この銀行の金庫に隠れておけばいいんだよ!」
「さすがお兄ちゃん!それなら、警察官に捕まらないね!」
ミチがうれしそうな声を上げる。
しかし、当然ながら、その他の人は、呆れた様な表情になっている。
(・・・・金庫の中は密閉空間だから、窒息死しちゃうのに・・・そもそも、金庫は、外から開けるから、中に隠れても仕方ないじゃん。)
私は、少し、この銀行強盗が可哀相になってきた。
「あの~・・・金庫の中にずっといたら、窒息するんじゃないですかのぉ~・・・」
銀行強盗の仲間になったお爺さんが、ミチに言った。
「・・・・・何で?」
ミチは、お爺さんに尋ねた。
「金庫の中は、密閉されているから、人が入ったら、だんだん空気がなくなりますからのぉ~」
お爺さんが、ゆっくりと説明をした。
「・・・・・でも、家のドアや窓の鍵に鍵を掛けても、窒息しないよ?」
「それは、家は隙間がありますからのぉ~」
「へぇ~そうなんだ!ひとつ勉強になった!」
うれしそうな声を上げるミチ。
お爺さんに聞いた話をミチは、もう一人の銀行強盗に教えてあげた。